日本製紙クレシア、5月から全製品10%以上値上げへ―生活必需品の価格動向と環境配慮の最新戦略

5月1日から全製品10%以上の値上げを実施、背景に「2024年問題」やコスト高

日本製紙クレシアは2025年5月1日出荷分より、クリネックスやスコッティなどの家庭紙製品を含む全製品で現行価格から10%以上の値上げを実施します。今回の価格改定は、原材料費や燃料費の高騰、2024年問題による物流費の増加、人件費の上昇など、家庭紙業界を取り巻く経営環境の厳しさが背景にあります。これまでも同社はコスト削減に努めてきましたが、現状の価格水準では自助努力のみでコスト増を吸収することが困難となり、値上げを決断しました。生活必需品であるトイレットペーパーやティッシュペーパーの値上げは、消費者や事業者の家計・経費に大きな影響を与える見通しです。

SDGs・環境配慮型製品への取り組み強化―牛乳パックリサイクルや芯なし長巻トイレットペーパー

日本製紙クレシアは、SDGs(持続可能な開発目標)達成を目指し、環境配慮型製品の開発・改良を積極的に進めています。特に注目されているのが、独自の紙パック回収システムを活用した「クレシアEFR」ブランド。牛乳パックやジュースパックなどの紙容器を回収・再利用し、バージンパルプ並みの柔らかさを実現したリサイクル家庭紙を展開しています。また、芯なし長巻トイレットペーパーなど、省資源化やごみ削減に寄与する商品も拡大。こうした取り組みは、消費者の環境意識の高まりや企業の社会的責任(CSR)への評価にもつながっています。

特許訴訟とブランド戦略―長巻トイレットペーパーを巡る業界競争の最前線

日本製紙クレシアは、従来の3倍長いトイレットペーパーなど独自技術を活かした商品開発に注力し、関連特許も多数取得しています。近年では、同様の長巻製品を展開する大王製紙との間で特許権侵害訴訟が発生。2024年8月、東京地裁は大王製紙側の特許権侵害を否定し、日本製紙クレシアの請求を棄却しました。判決理由は、紙の表面の凹凸やパッケージ構造などで両社製品の構成が異なる点にありました。日本製紙クレシアは控訴の意向を示しており、今後もブランド戦略や知財を巡る動きに注目が集まります。業界全体で長巻・省資源型トイレットペーパーの需要が高まる中、各社の技術競争と市場シェア争いも激化しています。