2016年に社会現象となった長編アニメーション映画『この世界の片隅に』が、2025年8月1日より全国で期間限定再上映されることが決定しました。終戦から80年、そして主人公すずが生きていれば100歳を迎える特別な年に、片渕須直監督による描き下ろしキービジュアルとともに、再び大スクリーンに帰ってきます。
『この世界の片隅に』再上映決定の詳細情報
2025年8月1日より期間限定全国上映
こうの史代による同名マンガを原作とした本作は、戦時下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いて生きる女性すずを描いた珠玉のアニメーション映画です。
今回の再上映は2025年8月1日(金)より開始され、全国の映画館で期間限定での上映となります。戦時中の広島・呉を舞台に描かれるかけがえのない日常とその中で紡がれる小さな幸せが、再び多くの観客の心を動かすことが期待されています。
テアトル新宿・八丁座ほか上映劇場情報
上映劇場については、東京のテアトル新宿、広島の八丁座をはじめとした全国の映画館での上映が予定されています。
2016年の初公開時は63館という小規模なスタートでしたが、口コミによって話題が広がり、最終的には累計484館での上映という拡大を見せた本作。今回の再上映でも、多くの映画ファンが劇場に足を運ぶことが予想されます。
終戦80年・すず100歳という特別な意味
戦後80年という歴史的節目
2025年は太平洋戦争の終戦から80年という大きな節目の年です。この歴史的なタイミングでの『この世界の片隅に』再上映は、戦争の記憶を風化させず、平和の大切さを改めて考える機会を提供します。
片渕須直監督は今回の再上映について、「この映画が最初に公開されてから9年。世界は戦争から逃れられないでいます。すずさんがそこで暮らしていたささやかな世界の片隅を、そのかけがえなさの意味を、もう一度感じてみたいと思います」とコメントしています。
主人公すずが100歳を迎える年
物語の主人公・北條すずが、もしこの世界のどこかで今も暮らしていたとしたら、ちょうど100歳を迎える年が2025年です。「すずさん百歳の年に ふたたび全国で。」というキャッチコピーも発表され、作品と現実の時間が交差する特別な意味を持つ再上映となっています。
片渕須直監督描き下ろしキービジュアル公開
昭和20年8月の運命の瞬間を描いたビジュアル
今回の再上映に合わせて、片渕須直監督による描き下ろしキービジュアルが公開されました。このビジュアルは、昭和20年8月、主人公すずが運命の瞬間を迎える物語の中でも特別な一場面を切り取ったものです。
大切なものを失ったすず。その頭にそっと添えられた優しい手が、胸に深い余韻を残すシーンが描かれています。戦争の悲劇と人々の優しさが同時に表現された、印象的な一枚となっています。
見る者の心に問いかける印象的な一枚
このキービジュアルについて、すずは何を思い何を見つめているのか、見る者の心にそっと問いかけてくる内容となっています。炊事の湯気、絵の具の匂い、笑い声といった何気ない日々の中にあった命の灯りを、80年の時を経て現在を生きる私たちに伝える力強いメッセージが込められています。
のん・こうの史代・片渕監督からの特別コメント
のん「毎日が愛おしくなります」
主人公すずの声を演じた俳優・アーティストののんは、再上映について以下のようにコメントしています。
「すずさんは、絵を描きます。美味しいご飯を食べます。家の仕事をしたり、家族で出かけたり、デートしたりします。日々を過ごしていく中で、現代の日本との違いが浮かび上がってくる。そして、見ていくうちになんでもない日常の幸せに心が溶けていくような心地になりました。毎日が愛おしくなります。この作品をまだ観たことのない方も観たことのある方もぜひ、劇場のスクリーンで観てみてください。」
こうの史代「誇らしく見守るばかり」
原作者のこうの史代氏からも、作品への思いを込めたコメントが寄せられています。
「描いた時は、細くとも永く親しんでもらえるといいな、と思っていました。映画に関わる皆様が強く育て、高く羽ばたかせてくれました。今はただ頼もしく、誇らしく見守るばかりです。感謝でいっぱいです!」
片渕監督「かけがえなさの意味をもう一度」
監督・脚本を手がけた片渕須直氏は、現在の世界情勢を踏まえながら、作品の普遍的なメッセージについて語っています。
「戦時中という時代の中に生きた人々を理解したくてこの作品を作りました。あの日々から80年。そこから地続きに連なる世界に私たちも生きています。すずさんも100歳になって、どこかで暮らしつづけているのかもしれません。」
社会現象となった作品の軌跡と再評価
63館から484館への奇跡的拡大
『この世界の片隅に』は2016年11月の公開当初、わずか63館でのスタートでした。しかし、戦時中の広島・呉を舞台に描かれるかけがえのない日常とその中で紡がれる小さな幸せが観客の共感と感動を呼び、口コミで話題が広がっていきました。
結果として、最終的には累計484館での上映まで拡大し、まさに社会現象と呼べる状況となりました。この拡大は、作品そのものの力と観客一人ひとりの熱い支持があってこそ実現したものです。
累計210万人動員・興収27億円の大ヒット
本作は累計動員数210万人、興行収入27億円を突破する大ヒットを記録しました。さらに、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞、第90回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位など、アニメーション映画としては異例となる数々の日本映画賞を受賞。その評価は海を越え、国際的な映画祭でも高く評価されました。
2025年の再上映は、このような輝かしい実績を持つ作品が、終戦80年という節目の年に改めて多くの人々に愛され続けていることを証明する機会となるでしょう。時は流れても変わらず心に残り続ける物語が、期間限定で劇場の大スクリーンによみがえります。