「市長失職」という衝撃的な言葉が、静岡県伊東市の名前とともに急上昇している。
この一件は、地方政治の話にとどまらず、「政治家の説明責任」や「市民の信頼」をめぐる問いとして全国に波紋を広げている。
話題の中心にいるのは、伊東市の田久保眞紀市長。学歴詐称疑惑を発端に、不信任、議会解散、市議選、そして失職の可能性へ――と、わずか2か月の間に政治の信頼が大きく揺らいだ。
学歴詐称から始まった“説明不足”の連鎖
田久保市長は、東洋大学法学部を「卒業」と公表していたが、実際には「除籍」扱いで卒業要件を満たしていなかったことが報じられた。
市議会が説明を求めても、市長は明確な回答を避け、疑念が深まったまま市政運営を続けた。
この「説明しない姿勢」が市民の不信を呼び、市議会は2025年9月1日、不信任決議を全会一致で可決。市長は9月10日に議会を解散して対抗したが、事態はさらに混迷を極めた。
市議選は実質“市長信任選挙”に
解散を受けて行われた10月19日の伊東市議選では、定数20に対して35人が立候補。
そのうち前職18人全員が再選し、結果的に市長支持派がほぼいない新体制が誕生した。
投票率は59.22%。前回より10ポイント以上上昇し、市民の関心と“怒り”の高さが数字に表れた。
選挙結果から見ても、市民は「説明をしない市政」に明確なNOを突きつけたといえる。
失職は確実と報じられる理由
地方自治法では、議会を一度解散した首長に再び不信任が可決されれば、自動的に失職となる。
今回の市議選で当選した20人のうち19人が「不信任に賛成」との立場を明言しており、形式的な手続きを残すのみというのが現状だ。
報道各社も「失職は確実」と伝えている。
短期間で2度の政治的判断を迫られた伊東市。そこには、リーダーの資質と市民の判断力の両方が問われている。
「リーダーの資質」として問われるもの
今回の問題は単なる「経歴の誤り」ではなく、「誠実に説明できるかどうか」が焦点だった。
肩書きよりも姿勢。学歴よりも信頼。
伊東市の一連の流れは、地方政治の現場における“誠実さ”の重みを浮き彫りにした。
一方で、市民の声が政治の方向を変えられるという事実も示している。
市民が示した“静かな怒り”と次の一手
「市長の説明不足に納得できない」「誠実に向き合う政治を見たい」――多くの市民がそう考え、投票所へ足を運んだ。
それは、派手なデモではなく、静かな一票として形になった。
これから伊東市がどう立て直すか。その鍵を握るのは、再び選ばれた市議たちと、変化を望んだ市民自身だ。
「政治」は誰かのものではない。信頼を取り戻す責任は、選ぶ側にも、選ばれる側にもある。