「揚げバター」。この世でもっとも罪深いスイーツのひとつかもしれない。
アメリカで生まれ、ネットで「地獄のジャンクフード」と呼ばれたこの料理を、あるネットユーザーが1年間、毎日食べ続けたという。
冗談のような話だが、そこには“快楽と依存”のリアルが詰まっていた。
きっかけは「週1のご褒美」から
最初はただの週末の楽しみだった。仕事の疲れを癒やすために、土曜の夜だけ作る「揚げバター」。
バター1本を衣に包み、カリッと揚げてシナモンと蜂蜜をかける——聞くだけで胸焼けしそうな一品だが、実際に食べてみると驚くほどうまい。
「これがないと1週間が終わらない」と語った彼は、いつのまにか週1を毎日に変えていた。
揚げバターって何?アメリカ発の地獄スイーツ
揚げバターは、アメリカ・テキサス州のフェアで2009年に登場した名物スイーツ。
冷凍バターを衣で包み、油で揚げ、仕上げにメープルシロップをたっぷりかける。
外はサクサク、中はとろり。カロリーは1本あたり500kcalを超える。
日本ではその豪快さとインパクトから、SNSやYouTubeで“ネタ食”として注目を集めた。
「うますぎて止まらない」——そして依存へ
あるネットユーザーが揚げバターにハマった理由はシンプルだった。
「仕事中もずっとバターのことを考えるようになってしまった」と語るほど、脳がその味を求め始めたのだ。
油と糖の組み合わせは、人間の報酬回路を刺激する。
脳はそれを“幸福”と誤認し、やがて依存のように繰り返し求めるようになる。
毎日100g以上のバターを食べ続けた結果
最初は1日1本(約100g)。しかし数ヶ月後には、1日2本、休日は4本へ。
1年間で体重は56kgから80kgに増加。
「健康診断ではまだ異常なし」と語っていたが、下痢や倦怠感など、身体のSOSは確実に出ていた。
カロリーで言えば1日1,000kcal以上を“油だけ”で摂取していた計算になる。
栄養の専門家も警鐘|「バター200g=脂肪酸摂取量の6倍」
成人の飽和脂肪酸摂取の目安は1日31g前後。
ところがバター200gには、その6倍以上の飽和脂肪酸が含まれる。
消化にかかる時間は48時間にもおよび、腸や肝臓に大きな負担を与える。
LDLコレステロールの上昇、動脈硬化、心疾患のリスクも無視できない。
それでも“うまい”は正義?
人は理屈ではなく感覚で生きる。
バターが揚がる音、甘い香り、口の中に広がる幸福感——それを理性で止めるのは難しい。
「うまいから問題なし」と彼は笑っていたが、その言葉の裏には、確かに“満たされた瞬間”があった。
ジャンクフードの本質は、体ではなく心を癒やすところにあるのかもしれない。
節制して長く楽しむという選択肢
完全にやめる必要はない。
バターそのものにも、ビタミンA・D・Eなどの栄養素は含まれている。
ただし「毎日」は明らかに過剰だ。
週1回、30g以下で楽しむ程度なら、幸福と健康の両立は可能。
トーストに少し塗るだけでも、香ばしさは十分味わえる。
結論:「やめられない」も、ちゃんと理解して続けよう
食べることは、生きることの喜びだ。
だが、喜びには責任がついてくる。
“好きなものを食べたい”という衝動を否定せず、ただその結果を知った上で選ぶ。
それが、揚げバターのような“禁断の美味しさ”とどう付き合うかの答えだろう。