分譲マンションの修繕方針を決める住人集会の決議方法が変わる!改正案の内容とメリット・デメリットとは?

政府は、2024年度にも分譲マンションの修繕方針などを決める住人集会の決議方法を緩和する法改正を検討しています。この記事では、現行法と改正案の具体的な内容やメリット・デメリットについて解説します。

はじめに

分譲マンションに住んでいる方は、共有部分の管理や修繕に関する住人集会に参加したことがあるでしょう。しかし、住人集会で修繕方針などを決める際には、出席者数が少なかったり、意見が割れたりすることが多くありませんか?そんな問題を解決するために、政府が区分所有法の改正を検討しています。

区分所有法とは、建物の一部を区分して所有する制度を定めた法律です。分譲マンションの管理や修繕に関するルールや手続きもこの法律に基づいています。区分所有法は、昭和40年に制定されて以来、大きな改正はありませんでしたが、近年のマンションの多様化や老朽化に対応するために見直しが必要とされています。

現行法と改正案の具体的な内容

現在は、住人集会で修繕方針などを決める際には、全員の過半数以上の賛成が必要です。欠席者は反対と見なされます。しかし、改正案では、出席者の過半数以上の賛成で決議できるようになります。欠席者は無関係と見なされます。

この改正案は、老朽化したマンションの改修を進めやすくすることが目的です。現行法では、出席者数が多くない場合や反対者が多い場合には、修繕方針などを決めることが困難です。その結果、マンションの価値や安全性が低下する恐れがあります。改正案では、出席者数が少なくても決議できるため、修繕計画の策定や実施がスムーズになる可能性があります。

メリット・デメリット

この改正案にはメリットとデメリットがあります。メリットとしては、出席者数が少なくても決議できるため、修繕計画の策定や実施がスムーズになる可能性があります。また、住人の意思決定の自由度が高まることも期待できます。デメリットとしては、欠席者や反対者の意見が無視される可能性があり、住人間のトラブルや紛争が発生する恐れがあります。また、修繕方針や長期修繕計画の内容が適切かどうかを判断する能力や知識が住人に求められることも考えられます  。

修繕方針や長期修繕計画とは

分譲マンションの修繕方針とは、共有部分の管理や修繕に関する基本的な方針を示したものです。修繕方針は、管理組合の理事会で作成され、住人集会で決議されます。修繕方針には、修繕の必要性や目的、範囲や方法、費用や負担割合などが記載されます 。

分譲マンションの長期修繕計画とは、修繕方針に基づいて、将来的に必要な修繕工事の内容や時期、費用などを予測した計画です。長期修繕計画は、管理組合の理事会で作成され、住人集会で決議されます。長期修繕計画には、マンションの現況調査や診断結果、修繕工事の優先順位やスケジュール、修繕積立金の積立額や残高などが記載されます 。

 

修繕方針や長期修繕計画の作成例

具体的なイメージを持ってもらうために、実際に作成された修繕方針や長期修繕計画の例を紹介します 。

修繕方針の例

以下は、築30年以上のマンションで作成された修繕方針の一部です。

修繕の必要性:

建物の老朽化に伴い、外壁・屋上・バルコニー等の防水性能が低下し、雨漏り等の被害が発生している。また、エレベーター・防災設備・給排水設備等の機能も劣化し、故障や事故のリスクが高まっている。これらの問題を解決し、マンションの価値と安全性を向上させるためには、大規模な修繕工事が必要である。
- 修繕の目的:建物の構造体・外壁・屋上・バルコニー等の防水性能を回復させることで、雨漏り等の被害を防止する。また、エレベーター・防災設備・給排水設備等の機能を更新することで、故障や事故を防止する。さらに、外観や共用部分のデザインを改善することで、マンションのイメージアップと居住性の向上を図る。

修繕の範囲:

建物の構造体・外壁・屋上・バルコニー等の防水工事、エレベーター・防災設備・給排水設備等の更新工事、外観や共用部分のデザイン変更工事など。

修繕の方法:

管理組合が修繕委員会を設置し、専門家の支援を受けながら、修繕工事の内容や方法、業者選定などを検討する。住人集会で修繕方針を決議し、修繕工事に着手する。

修繕の費用:

修繕工事にかかる費用は約3億円と見込まれる。このうち約2億円は修繕積立金で賄い、残りの約1億円は区分所有者からの一時金で賄う。一時金の負担割合は、区分所有者の所有面積に応じて算出する。

長期修繕計画の例

以下は、築30年以上のマンションで作成された長期修繕計画の一部です。

マンションの現況調査:

建物の構造体・外壁・屋上・バルコニー等の防水性能や劣化状況、エレベーター・防災設備・給排水設備等の機能や寿命、外観や共用部分のデザインや居住性などを専門家による現況調査や診断を行った。その結果、建物全体に老朽化が進んでおり、大規模な修繕工事が必要であることが判明した。

修繕工事の優先順位:

現況調査や診断結果に基づいて、修繕工事の優先順位を決定した。優先順位は以下の通りである。

  • 優先度1:建物の安全性や耐久性に直接関係するもの。例えば、構造体・外壁・屋上・バルコニー等の防水工事、エレベーター・防災設備・給排水設備等の更新工事など。
  • 優先度2:建物の価値や居住性に影響するもの。例えば、外観や共用部分のデザイン変更工事、エントランスやロビー等の改善工事など。
  • 優先度3:建物の快適性や利便性に関係するもの。例えば、防音性や断熱性を高める工事、インターネット回線やケーブルテレビ等の設備導入工事など。
修繕工事のスケジュール:

修繕工事の優先順位と現況調査や診断結果に基づいて、修繕工事のスケジュールを決定した。スケジュールは以下の通りである。

  • 第1回修繕工事:令和5年度に実施。優先度1の工事を中心に行う。工事内容は、構造体・外壁・屋上・バルコニー等の防水工事、エレベーター・防災設備・給排水設備等の更新工事など。工事費用は約3億円。
  • 第2回修繕工事:令和10年度に実施。優先度2の工事を中心に行う。工事内容は、外観や共用部分のデザイン変更工事、エントランスやロビー等の改善工事など。工事費用は約2億円。
  • 第3回修繕工事:令和15年度に実施。優先度3の工事を中心に行う。工事内容は、防音性や断熱性を高める工事、インターネット回線やケーブルテレビ等の設備導入工事など。工事費用は約1億円。
修繕積立金の積立額と残高:

修繕積立金は、区分所有者が毎月支払う管理費の一部であり、修繕工事にかかる費用を積み立てるためのものです。修繕積立金の積立額と残高は以下の通りである。

  • 現在の積立額:月額1万円(所有面積に応じて変動)
  • 現在の残高:約2億円
  • 今後の積立額:第1回修繕工事後から月額2万円(所有面積に応じて変動)
  • 今後の残高:第3回修繕工事後に約1億円

おわりに

分譲マンションの住人集会で修繕方針などを決める際には、現行法では全員の過半数以上の賛成が必要ですが、改正案では出席者の過半数以上の賛成で決議できるようになります。この改正案にはメリットとデメリットがありますが、最終的には住人自身が判断することになります。そのためには、修繕方針や長期修繕計画という基本的な概念を理解し、適切な情報収集や意思表示を行うことが重要です。分譲マンションの管理や修繕は、住人の共同責任です。住人集会に積極的に参加し、自分の意見や要望を伝えましょう。

 

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